「はああっ!」
「てぇーいっ!」
いきなり『闇の申し子』に向かって走るあたしとレイ。
『闇の申し子』が動いた瞬間、あたしは右に、レイは左に飛ぶ。
何のことはない、左右の位置を逆転させただけのフェイントだ。
が、それに構わず『闇の申し子』の右手に黒い光が灯る。
きゅむっ! ぎゅむんっ!
打ち出されるときに音すらたてて、黒い魔力弾が飛来する。
ダッシュでそれをかわすあたし。
「避けてレイッ!」
言われるまでもなく、レイも魔力弾をよけている。
どおおんっ!
ひえぇぇぇぇぇぇ………無茶苦茶だぁ
かなり大きな音をたてて、魔力弾は大地に半径3メートルぐらいの穴を穿つ。
「ハズしたかぁ……ま、いいや」
事も無げにいう『闇の申し子』。
「どーするレイ? うかつに近づけないわね」
「離れていれば、魔力弾もかわしやすくなる。
魔法の遠距離射撃だ」
「いいわ」
あたしたちは『闇の申し子』からさらに離れる。
十分な距離をとるとあたしはくるりっ、と振り返る。
「蒼光烈砲!(ブラムライトキャノン)」
「甘いねっ!」
ぱきいぃん
あたしの手から発射された蒼い光はしかし、『闇の申し子』の一喝で砕け散る。
と――――
きゅどどごごばごごごごぉん!
やたらとド派手な音をたてて、『闇の申し子』が反撃の魔力弾を撃ってくる。
しかも、広範囲無差別。
でぇろわぁぁぁぁ! これじゃ間合いをとった意味がないぃぃぃ!
とっさに地面に伏せる。
運良く魔力弾は当たらなかった。
しかし、ハッタリじゃなく『闇の申し子』は強い。
しかもあたしとレイだけではなく、眠り込んでいるカイがいる。
カイを横に置いて、どかどか呪文をぶっ放す、というわけにもいかない。
「レイ! カイのまわりに一定時間有効みたいな障壁張れるっ!?」
「出来る!」
今からレイが空間を渡って、カイを安全な場所まで連れていってもいい。
しかし考えても見れば、『闇の申し子』がいる限り、ここら辺一帯に安全な場所
などありえない。
ならば、移動の間だのタイムロスはただの無駄にすぎない。
腹を決めて、ここにいたほうがいいのだ。
レイがカイのまわりに結界を張ったらしい。
しかし、この間『闇の申し子』は全く攻撃を仕掛けてこない。
ただ、底冷えするような瞳に冷たい笑みを浮かべて佇んでいる。
「レイ……マジでやんないと、カタぁつかないね」
「そうらしいな」
一つ頷くと、あたしは術の詠唱を始める。
その術こそ―――星屑の嵐(スターダストサイクロン)
この世の闇を統べる魔王、『闇の中の闇』(ダーク・オブ・ダーク)に力を借
りた黒魔法。
攻撃力は、人の使いうる術中なら間違いなく最強。
それに対してレイは、聞き覚えのない術の詠唱をしている。
あたしの術が―――完成した!
「星屑の嵐!」
空が漆黒に染まっている。はずだ。
鉛色の雲に遮られて、空自体は見えないが青いはずの空は黒く染まっているだ
ろう。
そして無数の光、魔の星屑が輝くのだろう。
どうやらレイの術が完成したらしい。
あたしの目には発動させたようには見えなかったが、レイの術も発動したよう
だ。
その証拠にぴきいぃんっ、と音をたててあたしとレイのまわりに壁ができる。
そうか。
レイはあたしの術を理解し、防御結界をはってくれだのだ。
この星屑の嵐という術、攻撃力も攻撃範囲も良いのだがたったひとつ欠点があ
る。
すなわち―――無差別広範囲殺戮呪文だということ。
敵味方関係なく効果が及んでしまい、その攻撃力のせいで生半可な結界ならば
いともあっさり貫通してしまう。
しかし魔族のレイが張る結界ならば大丈夫。
………だと思う………
全然根拠無いけど。
やがて雲に穴を開けて、星屑が降り注ぐ。
と、『闇の申し子』が右手を天に差し上げる。
指先から金色の光の輪が、水に広がる波紋のように宙に広がった。
その波紋が大きく広がって消えたとき、降り注ぐ星屑もゆっくりと力をなくし、
大地に届かぬまま消える。
「うそ……でしょ………」
あたしは自分の目が信じられなかった。
『闇の申し子』は星屑の嵐をいとも簡単に中和してしまったのだ。
自慢じゃないが、あたしの魔力容量は人並みはずれて多い。
その魔力容量で操っている術を詠唱もナシに中和するなんて………
「………ちっ………」
レイは腹立たしげに舌を鳴らすと、結界を解いて無造作に歩みを進める。
「ちょっ、レ………」
言いかけた言葉をあたしは飲み込んだ。
レイの体から邪悪なまでの魔力が立ち上っている。
のが、見えた。
これこそ冗談じゃない。
魔力というのは、呪文や魔力弾のような形にしてやらないと、感じることはできて
も見えないはずなのだ。
なのに、見えているのだ。
そしてまた、『闇の申し子』の身体からも同じく。
人間とはケタが違う力だ。
悔しいけどあたしには手が出せない。
せいぜいが、レイの足手まといにならないことぐらい。
「『闇の申し子』お前は、闇の中の闇様の分身。
そうだろう?」
レイが口を開いた。
「そう! よく解ったね」
おもちゃを見つけた子どものような口調で『闇の申し子』は返した。
「そして、俺もまた」
「へぇ………じゃあ『お兄様』ってわけ?」
「全てのモノは闇より生まれ、光に帰って行く。
命とは、闇から生まれるのさ」
「それで?」
「言い換えれば。闇の中の闇様は、全ての母」
「そしてまた……」
「俺達の母体―――――――」
―――――え?
スベテノモノハヤミヨリウマレヒカリニカエッテユク
イノチトハ、ヤミカラウマレル
この言葉をずっと昔、聞いたことがあるような気がする。
いつだったっけ……どこで聞いたのかな?
「御託は終わりだ。
始めようぜ」
「僕はいつでもいいよ」
レイは軽く頷くと両手を左右に広げた。
そう、シルエットだけならば十字架のように見える。
レイの身体から立ち上っていた魔力がわだかまり、レイを包む。
と、レイの足が大地から離れた。
レイは、自分の魔力を高めて宙に浮いたのだ。
………人間じゃないからしょうがないけど、ちょっと異常だわ………
ぎっ……ぎぎぃいっ
めぎっ ごきごきっ
あたしの思考中断させたのは、何とも言えない嫌な音だった。
「何よこの……………」
顔を上げたあたしは、危うく叫んでしまうところだった。
レイの背から、三対の悪魔の翼が生えていたのだ。
そう、まさにそれは『生えて』いた。
しかし嫌な音は翼が生えるときに鳴っていたのではなかった。
魔族は身体の形を変えることも自由なので、『生える』ということ自体は非常
にスムーズだった。
翼が鳴いているのだ。
まるで別の生き物のように、伸びる度に呻き、軋む。
かなり気色悪い光景だ。
完全に伸びきるとばっ、と大きく開く。
それを待っていたかのようにレイの頭から、角が二本生える。
両目の下に血色をした線が表れ、細い指の先の爪が銀色の月のように延びた。
「そんな能力を持ってるんだ………すごいね。
僕にはないんだ。だから同じ姿になって戦えない。
でも、実力伯仲だと思うよ」
『闇の申し子』は嬉しそうに言い、その場でとんっ、と一回跳ねた。
ヴォンッ!
衝撃波が押し寄せてくる!
「うくぅっ」
流されないようにするのが精一杯。
しかしレイは、何事もなかったかのように浮いている。
ふいに『闇の申し子』の姿が霞み、次の瞬間レイの前に現れた。
魔力で光る右手をレイに叩きつける!
しかしレイは紙一重でそれを避け、膝蹴りを放つ。
しゅんっ、と『闇の申し子』が消え、レイが地面に降りる。
と、閃光が黒い軌跡を描いて立て続けに空を走る。
『闇の申し子』が精神世界から攻撃しているらしい。
それらを受け止め、弾き、あるいはかわすレイ。
時折その閃光があたしに向かったりもするが、自分で結界を張って防御する。
あたしはどうやらここでぼーーっと見ているしかないようだ。
でもレイが負けたらどーしよぉ………
ま、そんときゃそんときで何とかしよう!
あたしは腹を決めて、レイと『闇の申し子』の戦いに目を据えた。
見た目には静かな戦いである。
レイも『闇の申し子』も表情一つ変えないし、音すらしない。
しかし、かなり激しい戦いのようだ。
二人の回りに渦巻く魔力がハンパじゃあないのだ。
今度はレイの爪が閃く。
銀色の光を残してそれは空しく空を切る。
と、『闇の申し子』がレイと大きく間合いを取って現れた。
「面白い戦いだね。
久しぶりにわくわくするよ………
でも悪いけど僕、この後もやらなきゃなんないことが沢山あるんだよ。
だからそろそろ終わりにする」
『闇の申し子』の言葉が終わる前からレイはじりっ、と構えている。
あたしの目にも『闇の申し子』の魔力が高まるのが解った。
レイが飛んだ!
突き出した両手には眩しいほどの魔力が灯っている。
がぎぃんっ!
そのレイを、『闇の申し子』の周りの魔力が跳ね返した。
弾かれた勢いを翼を広げて殺すレイ。
さっきレイの手に灯っていた魔力はかなり大きかった。
それを弾き返すって事は、かなりの大技を出すつもりか!?
「奥義――――――魔闇黒妖呪――――――」
『闇の申し子』の唇が言葉を紡ぎ終わった――――
その時だった。
辺りが漆黒の闇に覆われたのは。
「なっ!? 何!?」
辺りを見回しても視界はゼロ。『闇の申し子』もレイも見えない。
そればかりでなく、二人の魔力を関知することもできない。
そして、あたしの身体と外の境界線がハッキリしない――――
ふと見れば、あたしの張った結界が闇に浸食されている。
あわてて魔力を高めようとしても、あたし自身の魔力が思い通りにならない。
あるいは、なくなったのか?
ぱきぃんっ
結界が中和された硬い音が聞こえた。
闇は『あたし』をも浸食する。
「うくっ………あっ………痛っ………」
身体と外の境界線がハッキリしないのに、ものすごい痛みが襲ってきた。
違う。身体が受けている痛みじゃない。
これは『あたし』自身、あたしの精神が受けている痛みだ。
精神攻撃――――――
こんなもんマトモに食らっていた日にゃ、五分であの世行きだ。
冗談なんかじゃない。
指先に魔力を集中してみる。
だめっ! こんな状態じゃ魔力を集中することはおろか、身体も動かない!
どうしたら……………
―――――――全てのモノは闇より生まれ光に還って行くの
え?
―――――――闇を恐れないで。命を否定しないで
誰!?
―――――――闇を受け入れなさい。遥か昔、あなたが生まれる前のように
誰なの!? レイ!? それとも『闇の申し子』!?
―――――――闇は、全てを創り出す
あなたもまた、闇から生まれたのだから
ああ………
―――――――闇に還りなさい。闇はお前を拒まないの―――――――
ああ………そうだった………
そうなんだ………そうなんだ………
あたしにはあなたが誰だか分かる
母――――全ての――――母さん
くいぃぃぃぃぃいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……ん
それが分かった瞬間、魔力が集中する音がした。
魔力は、いや、『闇の申し子』が放った闇はあたしの中に入っていった。
不思議と、あたしの気持ちは穏やかだった。
もう一度、あたしの中に、闇が宿った。
あたしは知っている。
人は、生まれるもっと前、光と闇を同時に持っているのだということを。
人は、神族と魔族の融合体なのだ…………
「なんだっ!?」
『闇の申し子』は驚愕の声をあげてあたしの方を見ている。
あたしの体に起こった変化。それに驚いているらしい。
人とは、神族と魔族の融合体だ。
つまり、神族の『光』と魔族の『闇』を同時に併せ持つモノ。
そして遥か昔―――――生まれるずっと昔、人は神族や魔族を凌駕する力を持
っていた。
しかし、光と闇が互いに打ち消し合う性質故、生まれてくるとき人は三種の中
で最も非力なのだ。
ならば、その遥か昔に遡れば、人はどのようになっているのか?
その答えが、これ――――――
あたしは闇を受け入れ、遥かな昔へと遡っている。
なぜなら、闇こそが全ての故郷だからだ。
人が、人でなかった時。
その時、人こそが『神』だったのだろう。
あたしの背からは、厚さ1cmくらいの金属のような翼が三対生えていた。
これこそが、光と闇の完全な姿。
無機質で、機械的で、無愛想で――――懐かしい。
人が『神』に戻るとき、魔族のように余計なものはくっつけない。
神族のようにやたらと優雅なモノもいらない。
それは彼らが弱い存在だったとき、自己を強くするための手段だった。
あたしたちは生まれる前、全ての『人』が『神』だったんだ。
その力が消えていくに従って、人は弱い存在へと戻っていった。
あたしの記憶は、全てを知っている。
「さあ、行くわよ」
あたしの瞳は『闇の申し子』を小さな闇の気の塊としか認識していなかった。
レイがどうしたとか、カイがどうなったとか、そんなことは関係ない。
「お前に『人』の洗礼を」
「っひ………いやだっ………くるなっ」
あたしの右手が淡い卯の花色に光った。
金属の翼が風を切り、瞬時に『闇の申し子』を射程距離内に捕らえる。
そのまま『闇の申し子』の頭を鷲掴みにする。
「『人』を」
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!
あひいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!
ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
「うるさい」
あたしは右手に力を込める。
苦痛の表情をさらに歪ませる『闇の申し子』。
ばしゅっ、とヤツの闇の気が霧散する。
ヤツの身体が下の方から透明化している。
もはや具現化する力すら残っていないのだ。
空いている左手を、『闇の申し子』のお腹の辺りにかざす。
「『人』は『光』の力も使えるのよ」
「ああああああああああああああああっっっっ!!!!」
ばううぅぅっ!
あたしの左手は、純粋な『光』を放っていた。
悲鳴を上げる間もあらばこそ。
ヤツの身体は虚空に散った。
が―――――――――
「ア……う……」
しぶといっ!
あたしが掴んでいた頭部だけは、断末魔の呻きをあげて残っている。
「ず…ズルいよ…………母さん…………
人間の………この……力は………覚醒しない………はずじゃないか……」
たどたどしい単語の羅列が、言葉を紡いでゆく。
あたしたちの力が、もしも生まれるとき、消え去らなかったとしたら――――
この世界に神族や魔族はいなかったのだろう。
「ズルい…………よぉ………………」
あたしの右手が『闇の申し子』を握りつぶした。
はしゅうっ………
闇の残光は、墨を流すように、消えた。
あたしはしばらく、何も考えずに佇んでいた。
ふっ、と空を降り仰ぐと、低く立ちこめていた雲がようやく散り始めていた。
その雲の切れ間から太陽の『光』が差し込んでくる。
あたしはそれを愛おしむように両手を広げ、『光』を浴びた。
『闇』が過去に戻るモノだとすれば、『光』は未来へと進むモノ。
あたしはさっき、『闇』を取り込んで、昔へと戻っていった。
つまり、あたしはもう一度生まれ直さなければいけないのだ。
この力は放っておいても消滅するほど不安定なものだけれど、あたしは自分で、
自分の意志で『人』に戻りたい。
あたしは『神』ではないのだから――――――――――
ゆっくりと、しかし確実に、あたしは戻っただけの時間を進んでいた。
それにつれて、背に生える金属の翼も、体の中の圧倒的な力も消えていく。
体の中の力が消えても、翼を無くしても。
あたしは『人』だから。
あたしは『人』でありたい。
「優勝は、水彩野キラさんでええぇぇぇっす!!!」
全く、完全にノーテンキな司会者の声があたりにこだました。
あの戦いは、司会者――――つまり、一般人からでも確認できたらしい。
が、しかし、である。
あの戦いは異常な力と力のぶつかり合いだった。
というより一方的ななぶり殺し……
結果、空間がおかしなふうにねじ曲げられ、どうやらあたしたちの姿は見えな
かったらしい。
これは後でレイが教えてくれたことだが。
レイと言えばあの二人、あたしが必死こいて戦っている間、ねじ曲げられた空
間から閉め出され、そこでぼーっと待っていたのだ。
どーりで姿が見えないと思ったら……
当然彼らに優勝する権利はなく、めでたくあたしが優勝、とまあこういうわけ。
「いかがでしたかぁ? キラさん。一ヶ月にわたるこの召喚獣レース!!
ご感想を一つ」
「んー………まあ、いろいろあったわね。でもまあ、無事に帰って来れて良か
ったわ」
イマイチ要領を得ない答えに、司会者は少々困り顔をつくった。
当たり前だ。
ンな、バカ正直に『いやー、闇の申し子ってやつがでてきてー、それをあたし
がやっつけたんですー。闇の申し子ってのは、闇の中の闇の分身でー…』なんて
いえるワケはない。
ハッキリ言って、高等魔族はほとんどその生存、というか存在が確認されてい
なく、伝説で語られていることなのだ。
まあ、今回の事件でそれもあながちウソではない、ということが分かったが。
「さて! 優勝賞品授与でえっす!!」
あたしの思考を完全にほっぽりだして、閉会式は進んでゆく。
「賞品は『操龍環』ですっ!!!
これはアウルス大陸北部の遺跡から発掘された魔法の道具で、持ち主の魔力
によっては龍をも操れる!! そんな道具でえっす!!」
『うををぉぉっ!!!!!』
集まってきているギャラリーの中からどよめきが聞こえた。
「ではキラさん、どーぞっ!!」
「ありがとーございますぅ」
んっふっふっ……何のために出たかってこの賞品のためよねぇ………
グリーンの秘石で作られた操龍環は太陽の光を反射してきらりと光る。
「おめでとうございます、キラ」
カイがにっこりと笑って言った。
「サンキュっ! カイ、レイ、あんたたちと会えて楽しかったわ」
あたしはカイと、そっぽ向いているレイに言う。
「ぼくたちも楽しかったですよ。あなたと会えて。
どうです? これが終わったらまた一緒に旅をしませんか?
あなたのことですから、次の予定くらい立てているでしょう?」
え……?
一緒に?
「いいけど………いいの? あななたちは」
「構いませんよ。ぼくはヒマですから。彼もね」
言葉を切ってカイはレイの方をちらりと見る。
「ふん、別に構わないよ。
お前といると楽しいから」
心持ち変な方向を向きながらレイは言う。
……さては……コイツ、照れてるな………
「そうね。一緒に行きましょ!!」
あたしは無意味に力強く、あさっての空の方向を指しながら言い放った。
その空は青く、あたしたちの行き先を祝福しているようでもあった。
(第零話:完)
*あとがきへ*